GO ALL OUTのインタビュー企画「未来を創る起業家たち」の特別編を提供します。「においの“なんとなく”をなくす」をミッションに掲げて事業を展開する、株式会社レボーンの松岡広明代表と永田富治取締役の関係が素敵でしたので、お互いに相手のことをどのように考えているか、おうかがいしました。
株式会社レボーン
嗅覚技術(Scent Technology)のインフラを構築し、人々の生活を豊かにする新たな文化の基盤を創造するための各種事業を展開しています。独自開発のにおいセンサとAIを活用し、世界中のにおいデータを蓄積したにおいのデータプラットフォームを構築し、『においの”なんとなく”をなくす』ことを目指しています。
大手食品メーカーにおいて、従来人の嗅覚によってのみ行われていた食品加工の生産ラインの官能評価試験を、レボーンの独自開発においセンサとAIをもって代替実施する実証実験を行い、工場導入を目指すなど、食品、環境、農業、医療などのさまざまなにおいに関する課題を解決するソリューションを提供しています。
――永田さんがレボーンにジョインしたきっかけをお聞かせください。
永田:日本たばこ産業(JT)で31年間一貫して、においや香りの開発や研究に携わっていました。役職定年となったころで、長年携わってきた知識や経験が役立つ企業に転職しようと活動をしていたときにレボーンのことを知りました。レボーンにはにおいの専門家が少ないように感じたので、事業に貢献できるのではないかと思い、入社を決めました。
JTの研究所での経験も含め、においセンサーに関する知識は豊富に持っていましたが、レボーンは単にセンサーを売る会社ではないことをすぐに感じました。松岡は「においの民主化」という言葉をよく使うのですが、「においを使って世界を変える」というコンセプトが私の肌感に非常に合っていました。
――松岡社長から見たときの永田さんの第一印象はいかがでしたか?
松岡:永田さんと面談する前にJTの一般社員が来ると聞いていたのですが、実際に来たのは「副所長」でとても驚きました。
永田さんのすごいところは、においの専門家でありながら、所長レベルの役割を果たすことができるところで、そういう人はあまりいないと思いました。また、永田さんが同じ九州の熊本出身であるところにも親近感を持ちました。
――永田さんは松岡社長のお話を聞いてどう感じましたか?
永田:スタートアップの経営者には先鋭的なコミュニケーションを取る人が多いという先入観がありましたが、松岡は全く違って気楽に話ができる方だと思いました。
――永田さんがレボーンに入社して感じたのはどのようなことでしょうか?
永田:入社してすぐに、大企業とのスピード感の違いを感じました。最初の1週間で、まるで3ヶ月ほどの時間を過ごしたように記憶しています。仕事のペースが速く、毎日「朝令暮改」のような動きがあり、これがスタートアップの世界なのだと感じました。当時はとにかく目の前のことに集中していたように思います。
――大企業とスタートアップではどのような部分が違っていますか?
永田:クライアントとして大企業とやり取りすると、大企業の意思決定には時間がかかっていることを改めて感じます。
私たちの場合は、松岡と少し話して30秒くらいで決めて動き出すことが普通です。スタートアップは手を止めるとお金が減る一方なので、次々と意思決定していかなければなりません。
この違いは本当に大きいと感じています。スタートアップの立場から見ると、日本経済全体の動きが心配になりますね。
――おふたりは役割をどのように分担しているんでしょうか?
松岡:社長としての方針設定や意思決定などが主に私の担当です。一方で、永田は取締役として、JTでの経験で得たにおいに関する専門知識を活かし、大手企業との関わりで重要な役割を果たしています。
社内では、かなりストレートに発言する私を永田がサポートしてくれています。
永田:ふたりとも濃淡こそあれ、全ての業務に関わっています。開発に関してはそれぞれの得意分野を生かしながら進めていますし、営業も一緒にやります。
――年齢が離れていながらもいい関係性ですね。
松岡:珍しいと思います。私は昔から大人の中で育ってきたので、年上の方でもいい意味で対等に接しています。年上でも年下でも関係なく、尊敬すべき人にはしっかりと賞賛を示します。
――親子くらい年齢が離れていてもお互いを経営者、研究者としてリスペクトしているんですね。
永田:そうですね。お互いにそういう気持ちがないと関係が長く続かないと思います。
――永田さんは「ナンバー2」として心がけていることはありますか?
永田:レボーンの社員のことを家族のように思っているので、心がバラバラにならずひとつの方向に向かうように心掛けています。
――永田さんは松岡社長のどこに惚れていますか?
永田:自由なところと、未来を読む感性ですね。すごく鋭い方だと思っています。
ただ、それを周りに説明するのが苦手なようで、社員が理解できないことも多いんですが、周りに惑わされずに、何ステップも先のことを考えて事業を進めていくところは素晴らしいなと思っています。
――永田さんから見て、松岡社長に直してほしいところはありますか?
永田:いっぱいありますよ(笑)例えば物を置きっぱなしにするところですね。あとはときどき、普通の人が驚くような行動をとったりします。
松岡:私は一般の人が考えもしないようなことでも、自分が真実だと信じていることは平然と実行に移します。例えば、営業先で、お客様から「予算が残っている」という話が出ることがありますよね。そのときに、予算の金額を具体的に聞こうとすることがあります。
――逆に、松岡社長から永田さんにこうしてほしい、と言うことはありますか?
松岡:私は常に、人の得意と不得意は一体であると考えています。得意なことがあれば、その反面で苦手なこともあるのですが、その苦手な部分を改善することは難しいと思っています。
だから永田さんにもあれこれ言いません。ただしそれは何も言わなくても彼が最善を尽くしてくれるという信頼があるからです。他の社員にも同じように接しています。
もちろん、全く何も言わないわけではなく、一般的に効果的と思われる方法についてアドバイスをすることがあります。
会社では、永田さんと近い距離で毎日6時間ぐらい一緒にいます。コミュニケーションも特別な工夫などせずに、普段考えていることを伝えるようにしています。
――素敵な関係性のお話、ありがとうございました。
この記事を書いた人
成重敏夫
北九州市を拠点に活動するライター・Web編集者。 企業取材、スポーツ取材など幅広く対応しています。
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