製造業のエンジニアリングチェーンのDXに取り組む株式会社ミラリンク。同社が運営する「めたまっち」は、新規事業や新商品開発に特化した金属加工のビジネスマッチングサービスです。創業者であり代表取締役の佐取直拓さんに、起業の経緯や事業の特徴、今後のビジョンについてお話を伺いました。
ミラリンクの事業概要
ーーまず、御社の社名の由来と事業についてご紹介いただけますか?
佐取さん:「ミラリンク」は「未来(ミライ)」と「つなぐ(リンク)」を組み合わせた造語で、製造業の未来をつなぐという意味を込めています。
当社は新規事業や新商品開発に特化した、金属加工のビジネスマッチングサービス「めたまっち」を運営しています。まだ図面が存在しないようなプロダクトを対象としており、いわばまだ世に出ていないものづくりをサポートしています。
ーー貴社の事業は製造業のどの部分に関わっているのでしょうか?
佐取さん:当社の事業は、ものづくり業界でいう「エンジニアリングチェーン」の一部を担っています。エンジニアリングチェーンとは、新商品開発の全過程のことで、企画から開発、技術検討、試作、購買までの一連の流れを指します。「めたまっち」は、このうち試作と購買の部分をサポートしています。
ーー「めたまっち」はどのような特徴を持っていますか?
佐取さん:「めたまっち」の最大の特徴は「伴走支援」です。私の経験を活かし、図面のチェックや工場選定のアドバイスを提供しています。メーカーから受け取った図面を確認し、必要に応じて修正や改善提案を行います。これは、図面の曖昧さや加工の難しさを事前に解消するためです。
また、量産段階での直接取引の推奨や、全国約250社の工場からの最適なマッチングも、私たちの強みです。
ーー「めたまっち」を新商品開発に特化したのには理由があるのでしょうか?
佐取さん:主に二つの理由があります。一つは私自身の経験からくる興味関心です。前職でずっと新商品開発に携わっており、新しいものづくりに強い興味を持っていました。
もう一つは、業界の課題です。現在、製造業ではエンジニアリングチェーンのDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きな課題となっています。多くの企業が新商品開発のプロセスを十分に理解しておらず、図面の品質向上や適切な工場選定にノウハウを必要としています。
佐取さんの起業ストーリー
ーー佐取さんのバックグラウンドと起業の経緯を教えていただけますか?
佐取:大学では材料学を専攻し、金属の研究に携わりました。卒業後は企業に入社し、水回り製品に使用される金属の挙動研究や新商品開発を行いました。大学時代から数えると、15年以上にわたって金属に関わってきたことになります。
2021年頃、新商品開発を数回経験する中で業界の課題が見えてきました。組織内での変革を試みましたが難しく、転職も考えましたが理想の仕事が見つからず、2022年2月に起業を決意しました。
ーー初期の頃はどのような苦労がありましたか?
佐取:最初の2年間は苦労の連続でした。全ての業務を一人でこなし、頼れる人がいない状況でした。方向性に悩んだ際は妻(現在は社員)に相談し、話を聞いてもらうだけでも大きな支えになりました。
事業面では、受注者と発注者のどちらを先に集めるべきか、いわゆる鶏と卵の問題に悩みました。最終的に、発注者を先に見つけることで工場も集まるという仮説を立て、それに従って進めました。
スタートアップとしての挑戦と成長
ーースタートアップとしての道を選んだ理由と、その影響を教えてください。
佐取さん:当初はスタートアップを目指していたわけではありません。起業後、資金調達のためにビジネスプランコンテストに参加し、COMPASS小倉を通じた資金調達も行いました。その過程で、「これはスモールビジネスというより、スタートアップの道を歩んでいるのではないか」と気づきました。
「誰もが自由にものづくりできる世界を作る」という弊社のビジョンを実現するには、大規模な資金調達と組織づくり、そして急速な成長が必要です。そのため、スタートアップという選択が最適だと判断しました。
現在、日々成長を実感する一方で、プレッシャーも増大しています。資金調達により組織が拡大すると、運転資金の消費ペースも速くなり、不安も強くなります。株主への還元や従業員の幸せなど、様々な責任が絡み合い、その重さを日々感じています。
今後の事業展開とビジョン
ーー今後の事業展開とビジョンについて教えてください。
佐取さん:私たちの最終目標は、エンジニアリングチェーン全体のDX実現です。現在の「めたまっち」は試作と購買をサポートしていますが、今後は開発や設計の領域にも広げていく予定です。
具体的には、設計者向けの新サービスを開発中です。多くの企業では、過去の設計データや実験データが散在し、必要時にすぐ取り出せない状況があります。私たちは、図面に関連情報を紐づけ、必要なデータをすぐに参照できるシステムの構築を目指しています。
これにより、設計者のスキル向上、不具合の減少、コミュニケーションコストの削減が期待できます。また、深刻化する製造業の人材不足や技術継承の問題にも対応できると考えています。
日本のものづくりにはまだ底力があると信じています。確かに現状では海外、特に中国の製造業に押されている面もあります。しかし、私たちのサービスを通じて設計者のレベルアップを図り、効率的で高品質なものづくりを実現することで、日本の製造業の活性化につながると確信しています。
「誰もが自由にものづくりができる世界」を作り、日本のものづくり産業に新たな可能性を切り開くこと。これが私たちの使命です。
まとめ
ミラリンクは、「誰もが自由にものづくりできる世界」の実現を目指し、製造業のエンジニアリングチェーンのDXに挑戦しています。新規事業・新商品開発に特化したマッチングサービス「めたまっち」を皮切りに、今後は設計者向けの新サービスも計画中です。佐取代表の豊富な経験と「日本のものづくりには底力がある」という信念が、同社の挑戦を支えています。
この記事を書いた人
成重敏夫
北九州市を拠点に活動するライター・Web編集者。 企業取材、スポーツ取材など幅広く対応しています。
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