2024.12.12 (最終更新日:2024.12.11)
ベンチャーキャピタリスト竹山将志氏が北九州市でファンド設立 〜日本の強みを生かしたスタートアップ支援で地域活性化を目指す〜
成重敏夫
はじめに
竹山将志氏は、新たなファンド「ナインキャピタル」を北九州市で立ち上げました。その設立の経緯や背景、日本のスタートアップ業界の現状と展望について詳しく伺いました。竹山氏は北九州市の企業誘致アドバイザーも務めています。
【竹山将志氏の略歴】
竹山将志氏は、ソフトバンクグループに新卒入社し、エンジニアマネージャーとして社内外の大規模システム開発に従事した後、事業開発マネージャーとして新規事業の立ち上げにも携わった経験を持つ。
その後、政府系ファンドのINCJ(旧産業革新機構)に移り、主にIT・IoT・ディープテック領域でのベンチャー投資に従事。さらに上場株運用会社のレオスグループにて、ベンチャーキャピタルを新規で立ち上げ、シード期のスタートアップに対するインキュベーションや投資を手がけている。
また、竹山氏は学生や社会人向けのアクセラレーションプログラムでメンターを複数務めるなど、起業家育成にも力を入れている。スタートアップに対する資金調達や事業開発の支援実績が豊富で、日本のベンチャーエコシステムの発展に貢献している。特に、地方における新たな産業創出とスタートアップ支援に尽力している。
2024年8月に、福岡県北九州市にて自身のベンチャーキャピタル「9 Capital」を設立。地方都市における起業家支援とイノベーション創出に注力している。
北九州でファンドを設立した理由
――北九州でファンドを設立した理由を教えてください。
竹山氏:ベンチャーキャピタルとして東京を拠点に活動していた頃から、西日本の地域に注目していました。北九州を訪れた際、人々の熱量と地域のポテンシャルを感じ、ここでファンドを設立することを決意しました。北九州の人々は非常にオープンで、初めて会った人でもすぐに輪が広がるのが大きな要因となりました。
――北九州市の企業誘致アドバイザーも務めているとお聞きしました。
竹山氏:スタートアップを中心に多くの企業の中から、北九州に適したスタートアップを誘致するのが主な役割です。ものづくり企業の生産性向上に寄与するBtoBのITサービスや、ディープテック、ハードウェアテック、クリーンテックといった分野の企業は、北九州との親和性が高いと考えています。投資先を北九州市に呼び込むことで、彼らの販路開拓にもつながります。
ナインキャピタルの特徴と地域連携
――ナインキャピタルが注力する分野と、地域との連携について教えてください。
竹山氏:地元企業や自治体と連携し、共同プロジェクトの立ち上げや新技術の実証実験など、多岐にわたるコラボレーションを展開していき、取り組みを通じて、スタートアップの成長を後押ししています。
日本のスタートアップエコシステムの現状と課題
――日本のスタートアップエコシステムの現状をどう捉えていますか?
竹山氏:創業期のスタートアップにとっては、融資や支援制度が充実しており良い環境が整っています。一方で、IPO市場は以前ほど活況ではありませんが、徐々に改善されるでしょう。国もスタートアップ支援を推進しており、資金面でのサポートは手厚くなっています。
課題は、グローバル市場での競争力をいかに高めるかです。技術力だけでなく、マーケティング力やグローバルなネットワークが不可欠であり、文化的な理解や国際的な視野を持つことも重要です。
事業戦略とスタートアップ支援の方針
――今後の事業戦略について教えてください。
竹山氏:日本の強みを活かせる領域、例えばソフトウェアでハードウェアの価値を高め、グローバルに勝負できる事業を創出したいと考えています。他にはディープテックやエンタメ分野でも、新たなビジネスチャンスを模索します。
また、アーリーステージのスタートアップへの投資と伴走支援にも注力します。連続起業家の再挑戦や、若手起業家の挑戦を、創業期からサポートしていきます。
――起業家の育成について、どのような支援を予定していますか?
竹山氏:若い起業家は、既成概念にとらわれない発想で、大胆な挑戦ができる存在です。彼らの情熱を引き出し、事業化を支援することが重要だと考えています。
特に学生起業家には、ビジネススキルを習得する機会を提供し、資金調達だけでなく法務、会計、人事など実務面のサポートも行います。大学や地域とも連携し、起業家教育プログラムの開発にも取り組む予定です。こうした支援により、若手の成功確率を高めることが狙いです。
地域経済の活性化とスタートアップ・エコシステムの形成
――地域経済の活性化に向けた、今後の活動計画を聞かせてください。
竹山氏:スタートアップ支援と地域振興を両輪で進めていきます。大学や高専の学生に、北九州でのアントレプレナーシップの魅力を伝えていきたいですね。やりたい技術の会社が見つからなくても、自分で起業すればいい。そのマインドを若い世代に根付かせることが大切だと考えています。
有望なスタートアップが生まれ成長すれば、ヒト・モノ・カネが呼び込まれ、地域経済へのインパクトも期待できます。スタートアップの成功が、まちづくりにもつながるのです。
エコシステムの形成に向けた出資者との協働
――ファンドへの出資者(LP)として、どのような方々を求めていますか?
竹山氏:北九州でのネットワークを生かし、スタートアップを点ではなく面でサポートしていただける方を求めています。市内の事業会社経営者や、場所を提供いただける方々など、近しい関係性の中で対話を重ねることで、投資先の成長を多角的に後押しできる体制を整えたいと考えています。
将来的には地銀や都市部の機関投資家からの出資も期待していますが、まずは地域に根差したパートナーとともに、エコシステムの基盤を固めていきたいですね。
竹山氏自身のモチベーションの源泉
――竹山さん自身のモチベーションの維持について、お考えをお聞かせください。
竹山氏:「楽しいことしかしない」を信条に、スタートアップ投資に臨んでいます。そのためには、自身の健康管理も欠かせません。週5回のサウナと、週1回の筋トレを欠かさず行っています。
スタートアップとともに困難を乗り越え、イノベーティブなプロダクトを生み出し、ひいては日本をアップデートしていく。そのプロセスそのものが、私にとって何よりのモチベーションになっています。
おわりに
竹山氏の北九州でのファンド設立は、日本のスタートアップエコシステムの発展と地域活性化という二つの命題への挑戦です。地域の強みを活かしながら、ソフトウェアの力でイノベーションを起こし、グローバルに勝負できる企業を輩出する。そのビジョンに多くの人々が共感し、独自のスタートアップエコシステムが形成されることが期待されます。
この記事を書いた人
成重敏夫
北九州市を拠点に活動するライター・Web編集者。 企業取材、スポーツ取材など幅広く対応しています。
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