GOMIソリューションズ株式会社は、熱分解技術を用いた廃棄物処理装置を開発・展開する企業です。環境問題が深刻化する中、同社の取り組みは廃棄物処理の新たな可能性を切り開くものとして注目を集めています。代表取締役の関山一太さんに、北九州に拠点を設立した背景や、技術の特徴、そして将来的なビジョンについてお話を伺いました。
北九州との出会いと拠点設立
――まず、北九州に拠点を設立された経緯についてお聞かせください。
関山さん:法人の設立は2024年2月ですが、事業そのものは3年前からタイでスタートしていました。この過程で北九州市の環境局の方々にお世話になり、カンボジアやタイ、パラオ、インドでの展開をサポートしていただきました。北九州市役所の皆さんは知見が高く、積極的に動いてくださった印象を持っています。その縁がきっかけで、会社設立時に北九州に拠点を置くことを決めました。
――それまでの北九州市の印象はいかがでしたか?
関山さん:正直、タイに行く前はそんなに強い印象は持っていませんでしたが、関わるにつれて、北九州市の魅力を実感するようになりました。「日本一起業しやすい街」を目指し、COMPASS小倉(スタートアップ企業の支援施設)のような拠点が設けられていることも素晴らしいと思いましたし、人が温かく、表裏なしで接してくれるところに魅かれました。
環境に優しい新しいごみ処理の取り組み
――貴社のお取り組みについて、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。
関山さん:私たちは、地球環境に優しい新しいごみ処理の方法を広めようと努めています。今、世界中では主に2つの方法でごみを処理しています。日本ではごみを燃やすことが多く、他の国々では土に埋めることが一般的です。でも、この2つの方法には、それぞれ環境や地域への影響という問題が残っているんです。
ごみを燃やすと、そこに含まれている大切なエネルギーが無駄になってしまいます。また、地球温暖化の原因となる二酸化炭素も出てしまうんです。ごみから電気を作る試みもありますが、設備を作るのにたくさんのお金がかかってしまいます。イギリスでは、環境を守るために、ごみを燃やすことをやめようという動きが出てきています。
ごみを土に埋める方法も、いずれは場所がいっぱいになってしまいます。例えばバンコクでは、埋めたごみから良くない臭いが出て、近くに住む方々が困っています。新しく埋める場所を作ろうとすると、地域の方々から心配の声が上がることも多いんです。
そこで私たちは、もっと環境に優しい第3の方法として「熱分解」という技術を提案しています。これは、酸素のない特別な装置の中でごみを熱で分解する方法です。この方法を使うと、ごみの量を10分の1以下に減らすことができ、さらに炭や油、金属などの形で資源として活用することができるんです。
事業に取り組むきっかけ
――この事業に取り組むきっかけは何だったのでしょうか?
関山さん:実は子どもの頃から漠然と廃棄物関連の仕事がしたいと思っていました。パッカー車(ごみ収集車)に乗っているゴミ収集の人がかっこよく見えたんです。
実際にはパナソニックに就職してものづくりの仕事をしていたのですが、退職して海外で自転車旅行を始めました。そのときに、東南アジアやヨーロッパを巡る中で廃棄物問題の深刻さを目の当たりにしました。
帰国後、熱分解技術に詳しい方と出会い、その方の人間性に惹かれ、支えたいと思って事業を始めました。残念ながらその方は今は離れてしまいましたが、技術は引き継いでいます。
――熱分解技術の具体的な特徴や課題について教えてください。
関山さん:実は、この技術は新しいものではなく、明治時代から日本でも取り組まれてきたんです。ただ、これまでは課題がありました。使うエネルギーの量に対して、得られる成果が少なく、お金もかかりすぎてしまっていたんです。
でも今では、装置を動かすのに必要なエネルギーを、ごみを処理する過程で生まれる再生油で賄えるようになりました。そのおかげで、新たにエネルギーを使う量を最小限に抑えることができています。廃棄物が持つエネルギーの約90%を有効に活用できるようになり、処理にかかる費用も大幅に下げることができました。また、装置を作るのにかかる費用も、ごみ埋立地や焼却炉に比べると、私たちの小さめの装置なら安価で済むんです。
さらに、私たちの装置には、もうひとつ大きな特徴があります。普通のごみ処理では、分別する必要がありますが、私たちの装置ではそれがいりません。混ざったままのごみも処理できるんです。技術の進歩は日々進んでいて、来年には今より40%も少ないエネルギーで動かせるようになると考えています。
現場で見たこと、感じたこと
――実際の廃棄物処理の現場はどのような状況でしょうか?
関山さん:昨日も埋立地を見学してきましたが、現場の状況は深刻です。生ゴミが腐ったような臭いの何百倍もの強さを感じる場所に立ち続けなければならず、普通の人なら吐き気を催す環境です。見学後、その臭いが5日間取れないこともあります。
しかし、廃棄物の山を見ると、私はテンションが上がります。これが全て資源に変わると思うと、まるで財宝の山のように見えるのです。資源を集めて生計を立てている「ウエストピッカー」の仕事を奪うことなく、残されたゴミを私たちが処理できる可能性を感じています。
世界での取り組みについて
――海外でのビジネス展開について、具体的にお聞かせください。
関山さん:現在、カンボジアに年内の廃棄物処理装置納入を予定しており、パラオや日本にも装置を納入しています。
私たちの事業は特に小さな自治体との相性が抜群です。広域で都市のゴミを集めて処理する大規模なシステムも必要ですが、小さな自治体や島々では、ゴミの輸送コストが大きな負担になります。私たちの装置は小型から大型まで作れるため、地域の規模に合わせたカスタマイズが可能です。
組織の規模と運営状況
――現在の組織の規模と運営状況について教えてください。
関山さん:私たちは現在、日本で6人、タイでも6人という小規模な組織で運営しています。タイのスタッフとは英語でコミュニケーションを取っており、マネージャークラスは日本語もできるため、橋渡し役になっています。
業界の変化について
――この業界では最近どのような変化が起こりましたか?
関山さん:この業界自体も大きく変わってきています。かつては「危ない」「汚い」というイメージでしたが、今は異業種から環境に取り組みたい人が増えています。例えば徳島県の上勝町では「ゼロ・ウェスト」を掲げ、リサイクル率80%を達成。地域から共感した人々が集まり、新しい取り組みが生まれています。
環境問題への取り組み方
――環境問題に関心を持つ人々はどのような視点を持つべきでしょうか?
関山さん:まず、現場を実際に見てほしいですね。文字や映像で見るのも大切ですが、現場を見ることで得られる理解があります。ボランティア活動も大切ですが、それだけでは本当の解決にはなりません。ゴミの最終処分がどうなっているのか、本当に必要な解決策は何なのかを考える必要があります。
海洋プラスチック問題も同様です。ビーチクリーンは重要ですが、集めたプラスチックをどう処理するのかを考える必要があります。海洋プラスチックは塩分を含むため、通常の焼却処理が難しいのです。
将来のビジョン
――将来はどのような展開を考えていますか?
関山さん:私たちの主戦場は海外、特に東南アジアとインドを含むアジア圏です。日本は技術的に進んでいますが、逆に言えば新しい技術を導入する余地が少ない。一方で、アジアにはたくさんの課題があります。まずはそこで成果を作り、その後日本での展開を考えています。
そして、今後も現場に寄り添った事業展開を続けていきたいと思います。パナソニック時代に、現場をおろそかにすると問題が起きることを学びました。たくさんの課題がありますが、一つ一つ解決しながら、持続可能な廃棄物処理のモデルを作り上げていきたいと考えています。
この記事を書いた人
成重敏夫
北九州市を拠点に活動するライター・Web編集者。 企業取材、スポーツ取材など幅広く対応しています。
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