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インタビュー

2025.03.06 (最終更新日:2025.03.03)

製造業の部品取引プラットフォームで業界を変える 株式会社KAMAMESHIの挑戦

成重敏夫

株式会社KAMAMESHIは、製造業の課題解決を掲げた日本製鉄株式会社発のスタートアップ企業です。部品が手に入らないことや設備の老朽化に着目して、新たな解決策を提供しています。本記事では、株式会社KAMAMESHI 副代表の西村友佑さんに、事業立ち上げの背景から具体的な取り組み、そして製造業の未来像についてお話を伺いました。

事業のスタートとその背景

——株式会社KAMAMESHIが設立された経緯について教えてください。

西村さん:株式会社KAMAMESHIの事業は、製造業の課題解決に向けた検討から始まりました。当初は、サプライチェーン全体でのCO2排出量の『見える化』を目指していました。

しかし、実際に中小企業や町工場の現場を訪れ、経営者や現場の方の声を聞くなかで、現場が抱える本質的な課題が見えてきました。特に印象的だったのは、古い設備が並び、年配の方々が現役で頑張っている工場や町工場の姿でした。そこで分かったのは、老朽化した設備が故障して復旧できなくなる一番の要因が、特定の重要部品が廃番となり手に入らないという問題が深刻化しているということです。基板・PLC・インバータなどの電子機器が入手できず、億単位の設備であっても、諦めなければならないケースが少なくありません。

この課題に対して、「その部品は絶対世の中のどこかにあるはずだ」という発想から、製造業版の部品売買プラットフォームの開発に着手しました。事業化の大きな転機となったのが、『始動』という経済産業省のグローバル起業家等育成プログラムでの優秀賞受賞でした。この受賞により、社会での重要性を確信し、具体的な事業化への道を探り始めました。

前例のない挑戦としての会社設立

——社内での事業化プロセスについて教えてください。

西村さん:日本製鉄において、自ら起業した会社への出向というのは前例が全くありませんでした。そのため、まず社内での理解を得るところから始める必要がありました。

『製造業への貢献』という理念については社内で多くの共感を得られ、多くの関係者が『いいね』と言ってくれる。ただ総論賛成ではあるものの、どうやって実現するのか答えがないという状況でした。一つ一つ丁寧に説明を重ね、最終的には日本製鉄㈱の橋本会長(当時社長)との対話を経て応援を頂き、社内起業制度が新設されて、第一号として出向起業での事業化が決まりました。

このように、日本製鉄グループの持つ強みと、スタートアップとしての機動力を両立させる形で、新しい挑戦がスタートしたのです。

製造業が直面する課題と「横串」の発想

——製造業の課題をどのように捉えていますか。

西村さん:日本の製造業は、垂直統合型の強固なサプライチェーンによって成長してきました。しかし現在は、多くの課題がある状況で、社内リソースの不足や費用対効果が合わない等、なかなか課題解決が難しくなっている状況です。さらに、華やかな業界ではないということで、なかなか従業員が増えないという『負の連鎖』にも陥っているのです。

「日本の製造業は、どうしたら世界で生き残れるか」——これが私たちの根本的な問いです。特に深刻なのが設備老朽化の問題です。中小企業が、それぞれの強みに特化しながら、安定した生産活動を継続し、将来に向けた有効な投資に踏み切れるような支援・サービスを提供していく必要があります。

このような状況に対して、私たちは企業間を『横串でつなぐ』という新しいアプローチを提唱しています。具体的には、同じ製造業の企業間はもちろん、商社、色んな業者、業界内で重要なプレイヤーたちがフラットに連携出来ることを重視しています。日本の製造業が世界で競争力を維持していくためには、このような水平型の横のつながりを活かした新しいエコシステムの構築が不可欠だと考えています。

包括的なソリューションの展開

部品管理&シェアサービス Kamameshi トップページ

——具体的なサービス内容について教えてください。

西村さん:私たちは3つの柱でサービスを展開しています。

まず予備品管理プラットフォームでは、予備品や資材の社内在庫管理をWEB化し、QRコード自動生成システムにより部品の現品管理を効率化しています。発注漏れ防止のアラート設定、生産終了品の把握、設備と予備品の紐付けなど、一元管理を可能にする機能を備えています。

次に設備部品売買サイトでは、手に入りにくい部品や納品までに時間がかかる部品の調達を支援します。また、自社内の余剰品は販売により在庫の適正化も図れます。異なる業界間でも部品の取引が可能で、思わぬマッチングが生まれることもあります。

三つ目の設備保全コンサルティングでは、設備保全の教育指導から資格取得の講座まで行っています。設備故障のリスク調査の実施や、点検アプリの提供、設備更新コンサルティング、更には予防保全の伴走支援まで、包括的なサポートを提供しています。

現在、製造業全般が顧客となっており、特に金属加工分野に強みを持っていますが、将来的には、金属加工だけでなく半導体業界、建設業界、食品業界など、さまざまな業界に展開できる可能性があります。これは、製造設備の制御系統に使われる電気部品が、業種を超えて共通している部分もたくさんあるためです。

サービスの実践と成果

——導入状況や具体的な効果について教えてください。

西村さん:現在、107拠点(2025年1月現在)ほどで私たちのサービスをご利用いただいています。2024年4月のローンチ以降、着実に導入企業が増加しています。

特徴的なのは、基本的に『部品の在庫管理システム』として、まず使って頂いている点です。従来、製造業ではあまり部品管理のSaaSは導入されておらず、設備の部品管理は優先度が低いとされてきました。多くの企業がEXCELの一覧表でハンド管理していて、それぞれの独自のやり方で負荷をかけて運用している状況だったのです。

私たちのサービスを導入いただいた企業では、各拠点ごとに担当者の属人的な管理になっていた情報を、1つのサービスで一元管理できるようになり、標準化を進めることができました。多言語対応できるため、海外拠点も含めて、誰でも簡単に在庫状況を確認できるので、拠点間での部品の融通も容易になっています。

具体的な成功事例として、PLCという制御装置のケースがあります。これは設備の『頭脳』とも言える部分なのですが、異なる業界の工場で使われていた同じ型番の部品を見つけ出し、マッチングすることができました。これにより、設備の復旧を早期に実現できました。

また、予想外の展開として、梱包資材や刃具や潤滑油など、定期的に製造業で必要となるモノの販売業者やメーカーからも注目をいただいています。彼らにとって、私たちのプラットフォームが新しいマーケティングチャネルとして機能する可能性があるからです。

日本の製造業が持つ可能性

——日本の製造業の強みについて、どのようにお考えですか?

西村さん:工場管理の面で、日本の製造業は依然として世界をリードしています。例えば、タイなどの東南アジアにある日本企業の製造拠点では、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)という管理の考え方が、かなり浸透しています。この日本式のモノづくりの考え方は、アジア市場への展開においても大きな強みになっています。

一方で、全ての工程を自動化できるわけではありません。必要な人材がちゃんと認められて活躍し続けていけるような製造業であることが重要です。デジタル化と人の技術を適切に組み合わせることで、より強い製造業を作っていけると確信しています。

未来への展望

——今後の展開についてお聞かせください。

西村さん:現在提供している部品マッチングは、止血剤のような、今助けを必要としている応急処置的なサービスという側面が強いと認識しています。今後は、設備故障を回避するための設備保全サポートシステムの提供や企業同士のコミュニティ形成など、会員企業への提供価値をどんどん大きくして行きます。

私たちのビジョンは、社名の通り**『製造業全体が同じ釜の飯を食える仲間』になっていく**ことです。そういう人たちと一緒に、若い世代の方が『ものづくり』を飛びこみたいと思える業態にしていく。そのために、その時代に必要なサービスと仕組みを提供しながら、想いと志を繋いでいくという姿勢で取り組んでいきます。

さいごに

株式会社KAMAMESHIの挑戦は、単なるデジタル化支援や部品マッチングの枠を超え、日本の製造業全体の構造改革を目指すものと言えるでしょう。

製造業の持続的な発展に向けて、必要な投資と支援を実現する仕組みづくりを進める同社の活動が、製造業の新たな未来を創造する契機となることが期待されます。

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この記事を書いた人

成重敏夫

北九州市を拠点に活動するライター・Web編集者。 企業取材、スポーツ取材など幅広く対応しています。

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